絵物語「言葉の断片」(三部作)

〜 愛のテーブル
  あたりまえの物語
  変容するオジサン

 koya noriyoshi 1980年代の絵画作業には、自分でもうんざりするほどに文字ばかりという時期が続きます。これを経過してから、今度はコラージュへと移行するのですが、ここでは「言葉の断片」としかいいようのない文字をコラージュしたものがかなりあります。これらの文字は文章の構文を暗示する程度のもので、絵画を性格づけるほどのものではありません。
 これらの作品群を1990年代の作品群とともにパソコンで合成処理しますと、コラージュされた文字は、あたかも語られていた物語が、たまたま何かの加減で隠されてしまった「物語の残映」であるかのように、まさに意味ありげな「言葉の断片」として蘇ってくるのです。
 たぶん、これは作者のひいき目ですが、こんな「言葉の断片」に触発されて、思わぬ物語を始めることになりました。この物語には筋書きらしい筋書きはありません。たまたま遭遇した絵画に触発されてこぼれた言葉の集積といったところです。
 こんなものを作品として提示するのは、はた迷惑なことかと反省しきりではありますが、これは一つの体験例としてご理解ください。
 つまり、「言葉の断片」という絵物語は、これらの作品群との遭遇によってあなたの芸術的体験ともいいうる物語を語り起こしていただきたいという願いを込めているのです。
 では、すばらしい芸術体験をお楽しみ下さい。

  1999.10
 
 koya noriyoshi


「はじめに」はここで終わりです。

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